チリンチリンアイス【青森旅】
- 2014/11/06
- 23:05
小学3~4年のころ、
転校生がやってきました。
おそらく隣のクラスだったと思うのですが、
わたしは、早速、見に行きました。
昼休みだったか…
教室を覗くと、
その転校生Aくんは、
自分の席に1人でポツンと座っていました。
わたしは、つかつかと隣の教室に入って行き、
話しかけました。
簡単な自己紹介の後、
「もう、案内してもらった?」
…と、ききました。
すると、「まだ…」だというので、
わたしが、学校を案内してあげたのです。
たぶん、そういうことだったと思います。
わたくし、今と違って、子供の頃は、
「友達づくりの名人」を自認しておりまして、
こういう子がいると、
放っておけない性質(たち)なのでした。
それが縁で仲良くなり、
時には、Aくんの家に遊びにいったりするのですが、
Aくんの家には、
明治生まれのこわいおじいさんがいるのです。
いつも、玄関の所で、気をつけの姿勢をとってから、
大声で…こわいおじいさんにも聞こえるように大声で、
「Aく~ん!あ、そ、ぼー!!」と、
節をつけて呼びかけました。
Aくんが出て来ると、小声で、
「おじいさん、どこに、いる?」
…と、おじいさんの居場所を確認してから、
そちらに向かって、「おじゃましまぁ~す!!」
…と、また大声で言いました。
ちゃんと、脱いだ靴も、そろえなくてはいけません。
ある夏の日。
Aくんの家に遊びに行って、
外で遊ぼうということになりました。
でかける前には、こわいおじいさんに、
行き先と帰る時間などを言ってから、
出かけなくてはなりませんでした。
Aくんが、こわいおじいさんに、
行き先などを告げ、出かけようとしますと、
おじいさんに、呼び止められました。
一瞬、怒られるんじゃないか…と、
ビクッ…としましたが、
こわいおじいさんは、
「これ、アイスでも買って、食べろ」と言って、
Aくんに百円玉を渡しました。
で、こう、付け加えたのです。
「これは、お前にやったんだからな!!
その友達の分ではないからな!!」
その友達…つまり、わたしに、
おごるんじゃないぞ!!
…と、念を押したのでした。
わたしは、それに対して、
何の不満もありませんでした。
「子供同士で、おごったりおごられたりは、いけない」
…という、おじいさんの考えは、納得のいくものでした。
Aくんの家を出て、長者山に向かいました。

上の写真は、先日の青森旅で撮ったものですが、
通称「女坂(おんなざか)」
今、長者山に登る場合、
このルートがメインルートになっていると思います。
わたしが小さな頃は、
こんなきれいに整備はされていませんでした。

山の上には、「新羅神社」があって、
その境内をブラついた後、
長者山のもう1つの坂、通称「男坂」の一番上の石段に、
二人で腰を下ろしました。
眼下には、八戸の家並が広がっていました。
夏の盛りで、せみしぐれが降り注ぐ中、
チリンチリン♪…と、涼やかな鐘の音が聞こえてきました。
アイス売りの屋台の音です。
通称「チリンチリンアイス」
「買って来る!」
Aくんが立ちあがりました。
「うん」と、わたしは答えました。
わたしは、その時、お金は持っていなかったので、
買うことはできません。
1人、男坂の上に残って、
街中の方を遠く眺めていました。
ジャリジャリ…玉砂利を踏む音が近づいてきて、
「トニー!」Aくんの声が聞こえました。
振り向くと、Aくんが立っていて、
片方の手をわたしのほうに差しだしていました。
「自分だけ、食べるの、悪いから…」
「じいちゃんには、絶対に!!内緒だよぉ…」
当時、ソフトクリーム形のものではなく、
「最中(もなか)」にすると、安くなって、
百円で2個、買えたのでした。
(1個30円だったような気もします)
2個買って、わたしに1個、ごちそうしてくれました。
二人並んで、男坂の上で、
眼下に街の風景を眺めながら食べたアイスが、
ウン十年経った今でも忘れられない味です♪
ウン十年後の…おじさんになってしまったわたしは、
男坂に向かいました。

危険注意!!…みたいなロープが張られていました。
男坂は、急坂ですし、
一応「石段」と呼んでいましたが、
きちんと整列したものではなく、
大きな石が斜面に埋め込まれているだけのもので、
「危険なので立ち入り禁止」ということなのでしょう。
今は、周りの杉の木が混んでいて、
坂の下の風景は見えませんでした。

でも、男坂の一番上の石段を眺めておりますと、
ウン十年前のAくんとわたしが、
チリンチリンアイスを食べながら座っている姿が、
ぼぉ…っと、浮かんで見えるようでした。
予定を変更して、長者山に来て、
ほんとうによかった…と思いました☆
↓人気ブログランキング「青森県」…第1位です。

応援、ありがとうございました。
感謝感謝☆